第84章 ルフィ
ある日のこと。
洗濯物を取りこんでいる水琴の耳にずしーんという物音が届いた。
森の方から段々と近づいてくる音に何事かと目をやる。
そしてフーシャ村の方から続く道から現れた姿に思わずその名を呼んだ。
「……ガープさん?」
「おう水琴!久しぶりじゃのう!元気にしておったか」
陽気に片手を上げるガープのもう片方の手には頬を掴まれずるずると引きずられるルフィの姿。
森の奥に伸びていた手がバチンっ!と音を立てて戻ってくる。
先程の音と今の様子から察するに、道中木を掴んでは抵抗を繰り返していたようだが残念ながらガープにはささやかすぎる抵抗だったようだ。
「じいちゃん!痛ェよ、放せよー!」
「駄目じゃ!お前は今日からここで暮らすんじゃ!」
「嫌だ!!おれは海賊になるんだ!!」
ガープの手から逃れようと暴れるがガープは全く異に返さない。
……かわいい。
そんなルフィの様子をうっとりと眺めていると、背後でドアが開く音がした。
「ガープさん?!」
顔を出したダダン達がガープを見て驚く。
「おぉダダン。今日からこいつも世話になる」
「はぁ?!誰?!」
「わしの孫のルフィじゃ」
孫ぉ?!?!とダダン達が絶叫する中ルフィはガープの手から逃れぱたぱたとその辺を歩いていた。
ふと目が合う。
「なァ、お前誰だ?」
近寄ってきたルフィが水琴を見上げる。
しゃがみこみ視線を合わせた水琴はにっこりと笑った。
「はじめまして。私は水琴。君は?」
「おれはルフィ!将来海賊になるんだ!」
大きな麦わら帽の縁を掴みルフィはにしし、と笑う。
その笑みは十七歳のルフィと全く変わらず、昔からこうなんだなと水琴は笑みを深めた。