第82章 不器用な愛し方
「__私が出会った頃のエースは、海賊を毛嫌いしていました。
いえ、海賊だけじゃない。海軍を、周囲の世界を、自分自身を。
……すべてを嫌っていたんです」
すべてを拒絶し、過去に未来に絶望していたエース。
「それが“本物の海賊”という目的を見つけたことで、変わったんです。
私は前のエースより、今のきらきらしたエースの方が好きです」
外の世界を夢見て楽しそうに語るエース。
勝てないことに悔しがりながら、なんとか一本取ろうと努力を怠らないエース。
「それにエースは私を本物の海賊と言ってくれました。
__こんな弱くて、ふがいない私を。
なら私はそのエースの想いを無下には出来ません」
本物の海賊は、決して力に屈さず己の信念を貫く。
ならば、ここで海軍中将という力に屈して己の身可愛さに膝を折ることだけはしたくない。
「なるほど。ならば今ここで捕まえても文句は言わんな」
「はい」
「捕まえた後お主をダシにエースに海賊を諦めるよう説得しても?」
「別に構いません。でも、無駄だと思いますよ」
「なぜ?」
ガープの短い問いに精一杯の笑みを返す。
「たとえ一時的にその主張を捻じ曲げることができたとしても。
__心を縛ることは、決してできませんから」
彼は何にも縛られない。
生まれた境遇にも、親の血にも。
ただ、その心のままにこの海を往くだろう。