第82章 不器用な愛し方
「いやァ、すまんすまん。久しぶりに会う孫がかわいくてつい、な」
「つい、で小屋半壊させないでください…」
「んん?」
「なんでもありません!」
ぼろぼろの小屋の広間で茶をすすりながらガープはちっとも悪びれない様子で謝罪する。
見逃してもらっている手前強く言えないダダンたちは広間の隅で小さくなっていた。
ちなみにエースは限界までしごかれ自室で倒れている。
今日はサボのところには行けなさそうだ。
あとで断りを入れに行っておかなくては、と今もエースを待っているだろう青い服の少年に脳内で謝罪する。
「さて、茶も飲んだし帰るか」
「あ、お帰りで…?」
「なんじゃ、なんならもっといるが」
「いえ、結構です!」
整列するダダンたちに見送られ小屋を出る。
入口まで見送ろうと水琴は後をついて外へ出た。
最初はどうなるかと思ったが、何事もなく終わりそうで気が緩む。
「そうじゃ水琴」
「なんですか?」
「エースのいう海賊とは、お主のことじゃろ」
しかしやはりそう簡単にはいかなかった。
なんせ相手は海軍中将。場数が違う。
先程までとは違う身を切り裂くような雰囲気に思わず呑まれそうになり、口をぐっとつぐんだ。
鋭い視線は一切のごまかしを許さず水琴を見つめている。
心臓が早鐘のように打つ。急速に乾いていく喉を湿らすように無意識に唾を飲み込む。
まるで少しでも動けば一呑みにされてしまいそうな錯覚に眩暈がする。
__これが、海軍中将。
初めて知るその気迫に冷汗が背中を伝う。