第82章 不器用な愛し方
「うげっ!!」
その背後でエースの押しつぶした悲鳴が聞こえ水琴は振り返った。
おそらくサボのところへ行こうと出てきたのだろうが、タイミングが悪かった。
「おォエース!元気にしとったか!」
「何しにきやがったくそジジイ!」
「何って、仕事ばっかで退屈だからこうやってかわいい孫に会いに来てやったんじゃろが」
「仕事しに戻れ!」
威嚇する猫のように毛を逆立てるエースにガープはちっともひるむことはなく
ほれほれ、再会の抱擁はないのか?ん?などと言いエースの神経を更に逆なでしている。
…ワザとなのか天然なのか判断に悩む。
「仕事っていっても、わしがいなくてもなんとかなるわい」
「てめェは自分の地位自覚しろよ!」
「未来の海兵を育てるのも立派な仕事じゃい!」
「だから、おれは海兵になんかならねェって言ってんだろ!」
一歩も引かないガープにエースがぶち切れる。
あ、でもこれは良くない流れ。
「おれは将来海賊になってこの島を出ていくんだ!」
「……海賊ゥ~?」
ほら、やっぱり。
エースの宣言にガープは当然眉を寄せる。
「なァにが海賊じゃ!ブルージャムのような輩になりたいと言うのか!」
「そんなんじゃねェ!おれは、あんなのとは違う本物の海賊になって名を挙げるんだ!」
「何が本物だ、お前は立派な海兵になっていつか海軍を背負って立つんじゃ!」
「誰がそんなことしてェって言ったよ!」
「言ってなくてもそうなんじゃ!お前は海兵になるとそう決まっとる!」
「勝手に決められて誰が素直に頷くか!おれは海賊になるんだ、指図は受けねェ!」
「この馬鹿ちんが!」
「…あ、あのう……」
白熱する祖父孫喧嘩(?)に勇気を振り絞り口を挟む。
しかしそんな恐る恐る絞り出された声に二人が気付くはずもなく。
「えェェえい!その根性叩き直してやる!来いエース!」
「ちょ、やめ何しやが…ぎゃーーーーっ!!!」
始まってしまった愛の鞭という名のシゴキは、小屋を破壊されとうとう無視できなくなった
ダダンが顔を覗かせるまで続いた。