第82章 不器用な愛し方
からりと晴れた空を見上げ水琴は伸びをする。
最近は天気のいい日が続いているため洗濯物がはかどって助かる。
風に揺れるシーツやシャツを眺めながら水琴は満足気に頷いた。
「今日は何をしようかな…」
食材の調達は昨日エースとサボに手伝ってもらったおかげでしばらくは必要ない。
朝食の食器もすでに洗い終えた。
たまには読書でもしようか。それとも掃除をしようかと考えていると、森の奥から地響きが響いた。
なんだろうと森の方へ目をやる。地響きは断続的に続いている。
そしてそれは次第に小屋の方へ近づいているように聞こえた。大きくなる揺れに眉を寄せる。
熊だろうか。今はまだエースがいるので頼めば対処してくれるだろうが、せっかくきれいに
洗い上げた洗濯物を台無しにされたくはない。
どうしたものかと見ていると、ぬっと森の陰から地響きの正体が現れ水琴は思わず口をあんぐりと開けた。
「うん?おぬしは誰じゃ。新入りか?」
「……ガープ…さん…?」
ルフィの実祖父であり、エースのことも猫かわいがりする(あくまで本人談)海軍中将が一人、
ゲンコツのガープ。またの名を海軍の英雄。
数々の海賊を屠ってきた伝説の海兵を前に水琴は失言をしたのにも気づかず呆然とする。
「なんじゃ、わしのことを知っているのか」
「あっ、はははい!ダダンさんから少し聞いたことがあって」
ガープに指摘され水琴は慌てて言葉を取り繕う。
「ご挨拶が遅れました、山賊見習いの水琴です。少し前からダダンさんにお世話になっています」
「そうかそうか。わしはガープじゃ。ほれ、これ土産」
どさりと目の前に放られた巨大なワニに地響きの正体はこれだったかと遠い目をする。