第13章 水晶の島
「…入ってみるか?」
エースに誘われ店に入る。
「いらっしゃい!お求めで?」
入ってきた水琴達を見て店主が声を張り上げた。
「今ならこの島限定の水晶ケースもセットで安くなるよ!」
「うっ……」
見せられた見本を見て水琴の心が揺らぐ。
どうやらカードケースのように複数のビブルカードが入れられるようになっているらしい。デザインも水琴好みだ。
なにより地域限定、という言葉に水琴は弱い。
「防水加工もばっちり!海に落ちても大事なカードが濡れる心配はないよ!どうだい?」
「作ってみるか?」
水琴が答える前にエースが尋ねる。
「これからはぐれるようなことがあったら持っとくと便利だしな」
「…それじゃあ」
お願いします、と店主に言えばあいよ!と明るい声が響く。
紙の材料として髪を数本渡し、翌朝取りに来ることを告げると水琴達は店を出た。
「………あ」
薄暗い通りにぽつぽつと明かりが灯り始める。
水晶のランプや店先の穏やかな光が通りを照らす。
「うわぁ……!」
柔らかい光があちこちの水晶へと反射し、様々な光を生み周囲は一気に幻想的な雰囲気へと変わった。
「な。夜までいて正解だろ?」
「ほんと!まるでお伽噺の中みたいです!」
連れて来てくれてありがとうございます!とエースへ笑い掛ければ彼もまた嬉しそうに笑った。
夕食も取り、宿へ戻る。
部屋の前で別れる前に「水琴」とエースに呼び止められる。
「これやるよ」
手渡されたのは小さな包み。
開けてみれば中から出てきたのは青水晶のペンダント。
「これ……」
「なんでも青い水晶ってのは珍しいんだってよ」
「ありがとうございます…!」
そうだ、と水琴も懐から小さな包みを取り出す。
「明日渡そうと思ってたんですけど」
私からも、と差し出せばエースは目を丸くした。
出てきたのはオレンジ色の水晶が連なるブレスレット。
「タンジェリンクォーツって言うんですって。エースさんらしい色だと思って」
「…サンキュ」
「今日は本当にありがとうございました」
おやすみなさい、と言葉を掛け部屋へ入る。