第13章 水晶の島
***
エースの言葉通り、その島は水琴の好みどストライクだった。
島全体が水晶の採掘場で、同時に加工場であるセレス島は水晶の加工品があちこちに見られ水琴の目を楽しませた。
「すごい、街頭が水晶のランプですよ!」
「あ、エースさん見てください!よく見たら道にも水晶が…!」
神秘的な情景に水琴はエースの腕を引っ張る。
「分かったから落ち着けって」
「だって…!」
エースの苦笑交じりの表情にはっと水琴は声を落とす。
「すいません、年甲斐もなくはしゃいじゃって…」
「いや、そこまで喜んでもらえたら連れてきた甲斐があったってもんだが…」
まずは宿取ろうぜ、と言うエースの言葉に目を丸くする。
「宿…?泊ってくんですか?」
「あァ。ここは夜が綺麗なんだ。どうせならその光景も見せてェしな」
それ見てから出るとちょっと危ねェし、とエースは付け加える。
確かに夜の海をあの小さな舟で行くのはちょっと怖い。
「心配しなくても、ちゃんと二部屋取るぞ」
「そういう心配してません!」
顔を真っ赤にして怒鳴るとくっくっく!とエースは笑う。
完全にからかわれている。
「エースさんって時々意地悪ですよね」
「そうむくれるなって」
無事に宿をとり、二人は島の散策を楽しんだ。
採掘場を見学したり、加工品を品定めしたり。
水晶の小川という、一面に丸く加工された水晶が敷き詰められた細い水路では、他の観光客に交じって裸足で入りその感触を楽しんだ。
「あー楽しかった!」
時折休憩を入れながら目一杯楽しみ、気がつけばもう夕方。
楽しい時間は早く流れるというのは本当だ。
「そろそろ飯屋でも探すか」
「そうですね。お腹空いてきちゃいました」
通りを歩きながら水琴はどの店が良いかと視線を彷徨わせる。
「あ、エースさん。あそこ」
気になった店を指差す。
「あそこどうですか?」
「ん?あそこは飯屋じゃねェよ。ビブルカード屋だ」
「ビブルカード…」
新世界ではお馴染みの名称を呟く。
どこに居てもその持ち主の場所と命の残量を示す、別名命の紙。