第81章 薄紅に見る夢
大工、雑貨屋、本屋に日用品店。
「清潔感が足んねェ」
「年上過ぎ」
「おどおどしてて弱そう」
「女っぽい」
次々とバツが付けられるリストを見てエースはほォらな!と胸を張った。
「言っただろ、水琴には彼氏なんてできねーよ!」
「お前なんて小舅?」
「は?こじゅう……?」
「いや、いいわ。エースが誰も認めないのはよく分かった」
力なく手を振るサボにムッとする。
まるでエースがわざと誰も認めようとしないような言い方は心外だった。
「なんだよ!おれだって、納得いく奴なら別に文句なんて……」
「じゃあ、エースが納得する奴ってどんな奴だよ」
「え?」
逆に聞き返され、まったく考えていなかったことにエースははたと気が付いた。
しかしここで正直に言えばサボの言う通りただ難癖をつけているだけの男となってしまう。
それはなんだかかっこ悪い。えーとだな、とエースは茶を濁しながら慌てて思考を巡らす。
水琴の恋人として納得のいく奴。
一体どんな奴だろう、とエースは頭の中で必死に人物像を組み立てる。
「__まず、強さは必須だろ。水琴は海賊だから、守れなくちゃ話になんねェし」
「うんうん」
「それと、水琴は綺麗好きだから清潔感も大事だろ。よく風呂入れ、服を着替えろって言ってるし」
「それで?」
「え?あと……まァ、やっぱり優しい奴の方が、うん。いいんじゃねェかな」
「へー」
「それにやっぱ年は近い方がいいんじゃねェか?あんま離れてても趣味とか合わなそうじゃん」
「そこは人によるんじゃないか?__あ、水琴」
通りの向こうからやってきた見慣れた影に二人は慌てて物陰に隠れる。
水琴は二人に気付いた風もなく、すぐ横をすり抜けていった。