第81章 薄紅に見る夢
次の日も。その次の日も二人は尾行を続けたが大体同じような場所で風となり消えてしまう水琴を最後まで追跡するのは困難だった。
今日も風と共に姿を消した水琴に置いてけぼりにされ、二人は尾行を中断しグレイターミナルへと向かうことにした。
サボの寝床の壁には『第一回水琴捜査会議』と書かれた張り紙がでかでかと貼られている。
「捜査の路線を変えよう」
「なんだよ捜査って」
「雰囲気出るだろ。水琴の尾行はこれ以上続けても進展が見られなさそうだし、対象を他に移してみるのはどうだ?」
「対象って?」
「最近水琴端町にもよく行ってるだろ。そこの人間を捜査するんだよ」
もしかしたら水琴の恋人候補が分かるかもしれない、と息巻くサボに対してエースはやや呆れ気味だ。
「だから、恋人はないだろって……」
「分かんないだろ~?“ない”じゃなくて、“あってほしくない”の間違いじゃないのか?」
「なんでだよ!」
「水琴に恋人が出来たら、構ってもらえなくなるもんな」
からかい混じりのサボの発言にカチンとくる。
煽られていると分かっていながら、しかしそれを受け流せるほどエースは大人ではなかった。
「__よォし、分かった。それならおれがアイツに恋人なんてできやしねェって証明してやろうじゃねェか」
見てろよサボ!と啖呵を切りエースは小屋を飛び出していく。
趣旨変わってないか?とのサボの呟きは俄然やる気を出したエースには届かず。
そのままの勢いで二人は門を抜け、端町へとやってきた。