第78章 楽しい休日の過ごし方
少し早めに出たこともあり、無事に辻馬車に乗ることもでき、いつもよりも少し時間をかけて中心街へと辿り着いた。
綺麗に整った石畳に足を付け、水琴は大きく伸びをする。
「馬車もいいけど、やっぱり座りっぱなしだと疲れるね」
「腹減った」
「そうだね。ちょうどいいし、お店に行こっか」
事前に下調べをしていたおかげで店にはスムーズに辿り着いた。
立派な店構えが二人を迎える。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
「二人で」
出てきた店員に案内され、個室を用意してもらう。
きちんと着飾っていたおかげか、水琴のこともエースのことも特に不審がることなく席へと着くことができた。
「ね?大丈夫だったでしょ」
拍子抜けしているエースに水琴はにっこりと笑う。
「さ!たくさん食べてね」
念願のラーメンを注文し、水琴はエースへと勧める。
初めて見る料理にエースも興味津々の様だった。
恐る恐る湯気の立つスープから麺を掬い取り口に運ぶ。
「……!」
途端に輝く顔に水琴は満足感を覚える。
ちゅるんと口に入り込む麺をもぐもぐと咀嚼し呑み込むと、エースはうめェ!と叫んだ。
「なんだこれ!もちもちしてて、すっげーうめェな!」
「でしょう?寒い日に食べるとあったまるんだよねぇ」
水琴も自分の分を啜る。
久しぶりに味わう上品な魚介出汁で取った黄金色のスープにほうと息を吐いた。
ゆっくり味わう水琴の前に空のお椀が置かれる。
どうやらエースはもう食べきってしまったようだ。
「おかわりいる?」
「いる!」
同じものを注文し、ついでに小籠包も頼む。
円卓に並ぶ料理は次々とエースの口の中に消えていった。
「デザートもあるよ」
「食う!」
きらきらとしたエースの表情に、それだけでお腹いっぱいになってしまう。
いつもと違う二人だけの食卓は、それでも賑やかで楽しかった。