第78章 楽しい休日の過ごし方
「変じゃねェ?これ」
数十分後。子ども用の正装を身に纏ったエースは落ち着かないというように服の裾を引っ張る。
「全然変じゃない!すっごくかわい、あいや、かっこいいよ!」
「お前今何言いかけた?」
「別に何も?」
危ない危ない。可愛いなんて言った時にはへそを曲げてしまうこと確実だ。
しかし可愛い。いやかっこいい。
自分のことながらよくこの服を見つけてきたと褒め称えたい。
ダークグレーのベストとスーツの三点セット。
スーツの裏地は濃い赤のチェック模様となっており、袖を折り曲げればアクセントにもなる。
全体的にスマートな大人っぽい造りではあるが、半ズボンから覗く膝小僧が少年らしさを絶妙に演出しており服に着られている印象を薄れさせる。
まさにかっこかわいい。
生きててよかった。
かつてのサンジのようになっていることには全く気付かず、水琴は拳を握り内心で萌えを叫ぶ。
「水琴も着替えたんだな」
「もちろん。どう?似合う?」
見上げてくるエースの前でくるりと水琴は一回転する。
春らしいベージュピンクのフレアワンピース。
腰元を幅広のベルトで引き締めながら、下はふわりと動きを見せる。
「……まァ、似合ってんじゃねーの」
「ふふ。ありがと」
素直じゃないエースの褒め言葉を受け取りそれじゃあ行こっかと水琴は出発を促す。
「早くしないと辻馬車に間に合わなくなっちゃう」
さすがにこの格好で森を歩くことは出来ないため、麓のフーシャ村から端町まで出る辻馬車に乗っていこうと考えていた。
時間まで三十分。いつもより歩きにくい格好なため早くしなければ間に合わない。
「やっぱおキレイな服は面倒だな。森を突っ切った方が速ェのに」
「それは私も同意見だけど。でも、いつもと違う行き方っていうのも新鮮で楽しいじゃない」
意外にも、馬車に乗るのは水琴も初めてだ。
初めての体験にエース以上にワクワクと胸を躍らせる。