第78章 楽しい休日の過ごし方
「うまかった!」
「……よく食べたね」
結構持ってきたつもりだったけど、財布はあっという間に軽くなってしまった。
一食に使うには少なくない金額ではあったけれど、エースの満足げな表情を見ていれば寒い懐も別の意味で温まるというもの。
親父さんありがとう。持たせてくれた宝石は有効活用できています。
「まだ時間もあるし、少し腹ごなしの散歩でもしようか」
エースの手を引きぶらぶらと歩く。
あまり中心街をゆっくりと歩いたことはなかったので、少し新鮮だった。
だが完璧に区画整理され、ごみの一つも落ちていない綺麗な街並みはどこか無機質に感じられ、何か落ち着かない。
それはエースも同様だったのか、そわそわと辺りを見渡す様子はラーメンを食べていた時の幸せそうな顔とは全く異なる。
「__かえろっか」
端町の乗り合い場へ向かい、予定よりも早い便に乗り込む。
遠ざかっていく街を見送り、水琴は詰まっていた息を吐き出した。
「なんか疲れちゃったね。エースは大丈夫?」
「別に平気だこれくらい」
「フーシャ村までは時間あるし、寝ててもいいよ」
「大丈夫だって言ってんだろ。水琴の方が平気か」
「んー……なんだろうね?」
そんなに疲れるようなことはしていない。
いつもよりもちょっとおしゃれをして、ご飯を食べて町をぶらつくなんて、元の世界だってよくやっていたことだ。
だが何となく水琴を支配する気疲れに首を捻る。
「初めての休日だったから疲れが出ちゃったのかな」
「帰ったら寝ろよ」
「そうだね。そうしよっかな……っ?!」
ぼんやりと座っていた水琴は突然揺れた馬車につんのめる。
何とか踏みとどまったものの、他の乗客も急に止まった馬車に困惑していた。
何があったのかとエースと顔を見合わせていれば外から男たちの怒鳴るような声と馬のいななき、そして銃声が聞こえる。
どうやら山賊に運悪く襲われてしまったらしい。