第78章 楽しい休日の過ごし方
「まずはね」
「おう」
「お着替えしよう!」
「………………ん?」
ひらりと水琴が取り出した、あまり見た事のないタイプの服にエースは一歩後ずさる。
「なんだよ、その服」
「ドレスコードって知ってる?お店によって適切な服装っていうのがあるの。きちんとした格好をしてれば、門前払いされることはないよ」
「……………やだ」
説明する水琴と服を交互に見比べて、エースは首を振り拒否する。
「そんな肩肘張った、貴族が着るような服着れるか。動きにくそうだし、イヤだ」
「……どうしてもダメ?」
予想通りの拒否に水琴はしょんぼりと眦を下げる。
エースが服を嫌がることは想定内だ。なので心は痛むが、ここは泣き落としにかかる。
「せっかくエースとお出掛けできると思って、へそくり崩したのに」
「………」
「エースに似合う服、探すために少ない自由時間で走り回ったのに」
「………っ」
「エースとあったかぁいラーメン食べたら、絶対美味しいと思って楽しみにしてたのになぁ」
「………っあぁもう!」
せっかくの休日なのに一人で出掛けるのかぁ。寂しいなぁといじいじしていれば耐え切れなくなったのかエースが吼える。
勝った。
「うじうじうるっせェなァ!行けばいいんだろ、行けば!」
「さっすがエース!話が分かる!」
泣き顔から一転、ぱっと顔を煌めかせればエースが頬をひきつらせる。
「てめ、騙しやがったな!」
「騙したとは人聞きの悪い。策略と言ってくれる?」
「同じことだろうが!!」
やっぱヤダ!と逃げようとするエースをひょいと抱え上げる。
「男に二言はないんでしょ?」
「……ぐっ」
水琴の追い打ちにエースは言葉を詰まらせる。
「自分で脱ぐのと、脱がされるの、どっちがいい?」
「………脱ぎます」
観念したエースはぐったりと項垂れた。