第77章 修行!
「__っ?!」
振るわれた鉄パイプが身体を横切る。
すり抜けてしまった獲物に驚くエースへ軽く風をぶつけた。
風に煽られころころと転がったその小さな身体はある程度の地点で仰向けの状態で止まったかと思えば、がばりと起き上がり「詐欺だッ」と喚いた。
「なんだよそれ!物理無効とか聞いてねェぞ!」
「言ってないし」
「先に言っとけよそういうことは!」
「律儀に敵が自分の能力説明してくれると思う?」
「んぐ……」
黙り込んでしまったエースに、しかしこれはあまりにも無謀すぎると水琴は考えを改める。
これではただただエースの自信を削ぐだけだろう。実戦形式とはいえ、稽古にならなければ意味が無いのだ。
どうしたものか、と考える水琴の視界にひらひらと白いものが揺れる。
ぶすっと座り込むエースが持つ鉄パイプから、包帯が解けかけ揺れていた。
「あ、そうだ」
今となっては遠い昔、施設の庭でよくやった遊びを水琴は思い出す。
「エース、しっぽ取りはどう?」
「しっぽ取り?」
「知らない?」
頷くエースにそれもそうかと思う。
最低でも二人必要な遊びをエースが知っているわけはない。
「しっぽ取りっていうのはね、鬼ごっこの一種で、自分が持ってるしっぽを他人に取られたら負けっていうゲームなの」
ズボンにしっぽとなる紐や布切れを挟み、全員が鬼となり他人のしっぽを取りに行く。
ただ取ればいいかといえばそうではなく、自分のしっぽも取られないように逃げ回らないといけない。
しっぽを取るための機動力もさることながら、取られないために周囲へも警戒も怠れない。
子どもの遊びながら、なかなかにハードなものなのだ。