第77章 修行!
「なァ、頼むよ水琴!」
天気の良い昼下がり、エースの懇願の声が響く。
家事も一段落し久しぶりに読書でもしようと庭で本を開いていた水琴はどこからか現れたエースの突然の言葉に呆気に取られていた。
「おれに、稽古をつけてくれ!」
「……いや、そうは言っても」
その内容に水琴は困ったように眉を下げる。
”本物”の海賊になると宣言してからしばらく。
どうやらエースの決意は本物のようで、どうすればより強くなれるか模索しているようだった。
エースの修行風景を微笑ましく見守っていた水琴だったが、まさか矛先が自分に向かってくるとは思いもせずうぅんと唸る。
「稽古っていっても、私戦い方なんて知らないよ」
「この前海賊たちばったばったとやっつけてたじゃねェか」
「私が知ってるのはあくまで能力の使い方。立ち回りとか、エースに合う戦い方とか、そういうのは分かんないよ」
だから無理だと断る水琴にそれでもいい、とエースは食い下がる。
「海には能力者が山程いんだろ。だから能力者相手でも戦えるようにしたいんだ」
なるほど。能力者相手に実戦を積みたいというわけか。
それなら別に稽古相手になってあげてもいい。
けれどひとつ問題がある。
「__たぶん、今のエースが私に勝つのは無理だよ」
「なんだよ!やってみなきゃわかんねェだろ!」
分かるんだよなぁこれが。