第13章 水晶の島
雑用を済ませ、ぶらぶらと船内を歩いていると突然目の前に大きな布が現れた。
咄嗟に動けなかった水琴は思い切りその布に突っ込み「うぷっ!」と声を上げる。
「__と、悪い。水琴か」
「なんですか、この布…」
一歩後ろへ下がり全体を見れば、それはただの布ではなく帆だった。
視線を下げれば少し強面の困った顔と目が合う。
「ウィリーさん、これストライカーですか?」
「おォ、よく知ってるな。この前エースが使いに行ったから整備してんだ」
カチャカチャと船底やマストの周囲をいじりながら整備士ウィリーは答える。
「ちゃんと整備してるんですね」
「そりゃな。なんせ動力が炎だから傷みも激しい。あいつも無茶な使い方するしよう…」
少しは大事に扱ってほしいぜ、と溜息をつく。
「ウィリーさんにとってはストライカーは子どものようなものなんですね」
「もちろん。設計からデザインまで全部俺がやったんだ。可愛くないわけねェさ」
よし、出来た!とウィリーはストライカーを元通り立てる。
仕上げに帆の張り具合やロープの傷みをチェックしていると「ウィリー!」と彼を呼ぶ声がした。
「ストライカー終わったか?」
「エースか。あァばっちりだ」
廊下の影からエースが顔を出す。
「あれ、なんだ水琴もいたのか」
「はい。ちょっと見学してたんです」
そんならちょうどいいや、とエースは言葉をつなげる。
「これから試運転すんだけどよ、水琴も乗るか?」
「え、いいんですか?」
ストライカーはどう見ても一人乗りだ。
水琴が乗るスペースなどあるのだろうかと不安になる。
いや、スペースがあったとしてもエースの炎で熱くないだろうか…
「水琴一人乗ったところでこいつは沈まねェさ。乗るならこっちが良いな」
不安そうにストライカーを見つめる水琴の心情に気付きウィリーがストライカーの前方を指差す。