第75章 山賊見習いと縮まる距離
「私もよく分かんないんですけど……」
エースが消えていった森を見る。
「なんだか、一緒にいないといけない気がして」
「………」
水琴の呟きを黙って聞く二人。
「「……恋?(かニー?)」」
「……人聞きの悪いこと言わないでもらえますか」
そりゃ未来では一応恋人同士だけど。
この時代でそんなこと言ったら犯罪だろう。
よく分からない感情を抱えたまま、エースに避けられる日々が続き一カ月。
「あ、エース。お帰り__」
洗濯物を取り込んでいた水琴はエースの姿を見てぎょっと目を見開いた。
「ちょ、エース?!どうしたのそれっ」
「なんだよ、うるせェな」
あちこちに擦り傷や打撲の痕を作ったエースが顔をしかめる。
傷はまだ塞がっておらず、血の跡が点々と森から続いていた。
「狩りに失敗したの?どうしてこんな、」
「失敗なんてするか。おれに構うな」
傷を診ようと手を伸ばす水琴を振り切りエースは小屋へと入っていく。
「エース!てめぇはまた傷だらけで帰って来やがって!床が汚れんだろうが!服だってタダじゃねぇんだよ!!」
「うるせェくそばばあ!!」
小屋の中からダダンとエースの怒鳴り合う声が聞こえる。
水琴が後を追い小屋に入れば、もう既にエースの姿は部屋へと消えていた。