第75章 山賊見習いと縮まる距離
「あ、エース」
仕事も終わり休息時間。
果物でも獲ってこようかと森を歩いていると小さな姿が目に入る。
声を掛けるとじろりと睨まれた。
「海賊が話しかけんじゃねェよ」
「今は山賊見習いだもん。何してるの?」
「……別に」
ふい、と視線を逸らされる。
横に座ろうとすればエースはさっと立ち上がり駆けていった。
「……手ごわい」
ルフィはよくめげなかったなぁと遠い目をする。
早くも心が折れそうだ。
「あ、エース」
「エース!」
「エースーー??」
それから、姿を見るたびに話をしようとするがすぐに逃げられてしまう。
顔を合わせられるのは食事の時くらいか。
それだって水琴は配給で忙しく、向こうも向こうで食べ終わればあっという間にいなくなってしまうため話す時間などあるはずもなく。
どうにかして話す時間が取れないかと悩む水琴の横をエースがすり抜けていく。
今日は珍しく洗濯も早めに終わり暫くやることはない。いい機会だと水琴はエースの後ろ姿へ声を掛けた。
「待ってエース!私も……」
「__ついてくんなよ」
弱い奴は嫌いだ、と睨みエースはさっさと森へ消えてしまった。
「あー……」
「水琴はまだエースにちょっかい掛けようとしてるニか?」
「ちょっかいって言い方ひどくないですか」
「やめといた方が……あいつはうちのもんでも手ェ焼いてるんだ。最近じゃお頭でも敵わねェ時あるし」
下手に近づくと怪我するぞ、と忠告される。
「__そうなんですけど、ね」
なんだろう。
別に帰る方法を探すだけならこの時代のエースと関わる必要なんてないはずなのに。
なぜか、あの目を見てると放っておけない気持ちが生まれる。