第74章 動き出した運命
「……あ、えーっと」
風を生むために腕を突き出した状態のまま、水琴は愛想笑いを浮かべる。
「……はっ、ダセェ」
「んなっ?!」
冷たい一言にがん!とショックを受ける。
確かに根に躓いて自分より大分年下の子どもに助けられるのは正直どうかと思うが、そんなはっきり言わなくても!!
若干涙目になっている水琴を無視し、エースは熊を運ぼうとうろうろと周囲を探る。
しかし強いとはいえ一人で熊を運ぶのはきついようで、ふむとエースは考えるしぐさに入った。
「…手伝おうか?」
黙って考え込む背中に声を掛ける。
帰ってきたのは殺気の籠った目。
「誰が海賊の手なんか借りるかよ」
よほど海賊が嫌いなのだろう。
エースは黙って台車を作り始める。
断られてしまった手前手伝うことも出来ず、水琴はちょこんと座りその様子を見ていた。
「……いつまで見てんだ」
黙ってみていると不意にエースが話しかけてきた。
「さっさと海にでも行っちまえ」
「__行きたくても、行けないんだよね」
エースの言葉にずきりと心が痛む。