第74章 動き出した運命
話している内に薄らとマルコが透けていく。
「……お」
「え、なんで?!」
慌てて自分の手も確認するが水琴の身体はくっきりと存在を保ったまま。
「嘘!やだ!!」
置いていかれる、と水琴は恐怖と焦りから蒼褪め感情的に叫ぶ。
「どうして、私だけ……!」
「水琴、落ち着け」
ぎゅっ、とマルコに抱きしめられる。
懐かしい、潮の香りが自身を包み半狂乱に陥りかけた水琴の心を慰めた。
「大丈夫だよい。絶対に帰れる」
「でも、どうしたらいいのかなんて…それに、もし未来に変な影響が出たら…」
自分の行動のせいで未来に何かあればと考えるだけで恐ろしい。
帰るためには動かなければと思えば思うほど、帰る未来が壊れてしまうかもしれない恐怖に水琴の身体は竦んでいた。
そんな水琴を縛る思考をあっけなく壊したのはマルコの好きにすりゃあいい、というやけにあっさりとした物言いだった。
「好きにって……」
「ここは確かに過去かもしれねェが、俺達にとっちゃ”今”でもある。未来が変わるかもなんてうじうじと悩んで動くことを止めんな」