第74章 動き出した運命
「で、その誰かって?」
「さァな。それからはいつものエースに戻って輪の中に乱入してったから話も聞けずじまいで、それっきりだよい」
「なにそれ!肝心なところ聞けてないじゃん!」
「仕方ねェだろい。次の日それとなく聞いてもまるっきり覚えてやがらねェし。とにかく、その誰かの影響であいつが海賊を目指すことにした可能性も考えられるだろい」
そんな話は初耳だ。
しかし、よく考えれば水琴が知っているエースは十歳くらいの頃。
一週間前見たエースは十歳にしてはやけに幼い気がした。
子ども時代のルフィよりも小さかったように思う。
それなら、この時代のエースはまだ海賊が嫌いで、これからそのきっかけになる“あいつ”に出会う可能性があるというわけだ。
__なんか、妬ける。
あんな殺気を放てるくらい海賊が嫌いなエースを変え、白ひげの元に身を寄せるまでずっとその心にいた存在。
一体どんな海賊なんだろう、とマルコを見つめる。
「…なんだよい」
「いや、その“あいつ”がマルコなら納得だなぁと」
現に今ここにいるし。
エースが憧れるくらいの海賊なんて、この時代では他に知らない。
「冗談じゃねェよい。俺はこの時代のエースと関わるつもりなんてねェぞ」
「正直どれ位関わっていいものか迷うよね。でもそろそろサバイバルはきつい…」
「お前この一週間どこで過ごしてたんだよい」
「木のうろ」
「……逞しくなったな、お前」