第74章 動き出した運命
新しく迎え入れた家族を歓迎する宴の中、酔いの巡りは頂点に達しようとしていた。
「あーいいねぇ!そういう話泣けるじゃねェか。夢を持つ青年ってのはいいもんだよな、なァマルコ?」
元スペード海賊団の一人に絡みながらサッチは上機嫌だ。
新入りのげんなりとした表情に心の中だけで合掌するとマルコはふと明かりから少し離れたところで一人座るエースへと視線を向けた。
いつもの破天荒な騒ぎっぷりとは裏腹に黙り込み一人輪を見つめる姿は普段の様子を知る者からすれば違和感を伴うものであり、また何か思い詰めているのかとマルコは眉をひそめた。
家族として迎える際に少々ごたついたこともあり、あれから少し経つ今もマルコはエースのことをなるべく気にするようにしていた。
だがマルコの心配をよそに周囲と打ち解けている様子を見てようやく肩の力を抜いてきたところだったというのに。
気づいてしまった手前放っておくこともできず輪から抜けて横へ腰かける。
エースはちらりと目を向けたがそれきり何を言うでもなく、量の減っていない酒瓶を手で弄んでいた。
「なんだ、もう酔っちまったのかよい」
「マルコか。……別にそうじゃねェよ」
「その割には量が減ってねェが」
「………」