第74章 動き出した運命
寒さに震え、水琴は目を覚ました。
ボロボロの毛布を身体から退け、ねぐらにしている木のうろへナイフで傷を付ける。
ガリッ
今日で七本目。
水琴がこの世界で目を覚まし、サバイバルを始めてから一週間が経った。
刻まれた線に溜息をつく。
「これからどうしよう…」
長くても二、三日我慢すればいいと思っていたが、まさかここまでの長期滞在になるとは予想外だった。
水琴は膝を抱える。
三日目から耐えきれなくなり、フーシャ村にでも行こうかと思ったが、あそこには幼いルフィがいる。未来に接触する可能性のある人間と会うのは避けるべきだろうとグレイターミナルまで出向き必要最低限のものを揃えた寝床は意外に快適だ。
帰る方法なんて見当もつかない。
異世界へ通じる井戸のように分かりやすくあればいいが、まさかここから新世界のあの洞窟を目指すわけにもいかない。確実に途中でのたれ死ぬ。
完全に打つ手なし。
膝に顔を埋めながら、水琴の脳裏に絶望の文字が浮かぶ。
「……ほんと、どうなってるわけ…?」
誤魔化し誤魔化しで保っていた精神もそろそろ限界だ。
震える声で小さく呟く。