第71章 世界を照らす一筋の光
食堂を探しながらこれからの動きを確認する。
結局夕飯を終えた後公園へ行き、宿に戻ることになった。
暗くなる前にと二人は食堂で腹を満たし、早速話題の公園へと向かう。
目的を同じくする人の流れに乗りながら、水琴も気持ちが昂ってくるのを止められなかった。
緩やかな上り坂を上がっていけばようやく公園の入口が見えてくる。
人混みの向こうに濃い桃色が見え、踏む緑に花弁が混じり始めた。
「わーすごい!やっぱり綺麗だね」
「へぇ。こりゃあ見事なもんだ」
広場に燦然と立ち並ぶ桜は誇らしげに枝を張り訪れる人々を歓迎していた。
風で舞う花びらの色は水琴が想定していたよりもずっと濃い。どんな花なのかと水琴は近くに寄り眺めた。
「……あ、これ八重桜なんだ」
ふわりと柔らかな印象を与える花弁は丸みを帯び咲き綻んでいる。
よく学校行事で作られる、薄い紙でできた造花を思い起こさせるその桜は少し重たそうに揺れていた。
「桜にも種類があるのか?」
「色々あるよ。この島はこれだけなのかな」
「探してみるか」
広場以外にも桜は植わっているようだ。
ゆっくりと眺めながら水琴達は公園内を巡った。
うっすらと積もる雪の白に桜の濃紅は良く映え、本来なら合わさることのないそれらの共演は御伽噺の中のような幻想的な雰囲気を感じさせた。