第71章 世界を照らす一筋の光
少ない荷物を持ったまま水琴は酒場を目指す。この世界ではあまり部屋に荷物だけを置いて外出はしないらしい。
今思えば荷物置いたまま席を離れても平気な日本って平和だったんだなぁとしみじみと思う。
酒場に着けば既にエースは飲み始めていた。
早速意気投合したらしい、隣の男性と肩を叩きながら何やら盛り上がっている。
こうやってあっという間に相手の懐に入り込んでしまえるところは純粋に凄いと思う。
初対面ではどうしても身構えてしまう水琴には絶対真似出来ないだろう。
「お待たせ」
「おう。んじゃーな、おっちゃん」
「なんだよ、デートかぁ?べっぴんさんじゃねーか。やるなー兄ちゃん!」
酔っ払いのからかいにエースはにやりと笑い水琴の肩を引き寄せる。
不意に身体を包む熱と香りにどきりと鼓動が跳ねた。
「いーだろ。やんねーよ」
エースの返しに酒場はどっと湧く。
頑張れよーとの声に手を振りながらエースは水琴を連れ酒場を出た。
「もう!何言ってるの」
「別に嘘じゃねーだろ?」
「そういう問題じゃないの!」
恥ずかしい、と頬に手を当てる。
「気にすんなよ。ただの酒場のノリだろ」
「……それ、言った本人が口にする?」
「あーほら。宿どうだった?」
分が悪いと悟ったのか、エースがやや強引に話を変える。
むくれつつも、水琴もいつまでもその話をしていてもしょうがないと話に乗ることにした。
「取れたよ。今桜の時期らしくてどこも混んでて大変だったよ」
「冬桜なんて珍しいな。それで人が多いわけか。幸い海軍も海賊もいねェみたいだし、飯食った後覗いてみてもいいかもな」
「やった!実はちょっと気になってたんだよね」