第71章 世界を照らす一筋の光
「春島の海域に入ったな。もうそろそろだ」
防寒具を着込み走らせること数刻。
前方に島の影が見えてきた。
「あれがそう?」
「あァ。港はもうちょい左の方だな」
島に沿うように方向を変え、無事に港に辿り着く。
解けないよう船を固定し、水琴は陸地へと降り立った。
「着いた!」
「お疲れさん。と言いたいとこだが、まだ終わりじゃねェぞ」
宿見つけないとな、と付け加えるエースにそうだったと水琴も再び気を引き締める。
「宿の手配は水琴に任せるな。おれはちょっと情報仕入れに行ってくる」
「分かった」
近くに海軍や海賊がいないかなど調べに行くのだろう。
酒場へ向かうというエースに後で向かうことを伝え、水琴は宿を探しに向かう。
「何かあるのかな……」
数軒回ればすぐに見つかるだろうと思っていたが、予想以上にどこも満室でなかなか部屋を押さえることが出来ない。
「すみません。まだ部屋空いてますか?」
「はいよ。何人だい?」
「二人です」
五軒目でようやく空き室を見つけ、任務を達成出来たことに水琴はほっとする。
「今日は何かあるんですか?随分と混んでるみたいですけど」
「知らないで来たのかい?今この島では桜が満開なんだ」
「桜?冬なのに?」
「狂い咲きっていってね。どういう訳かこの島の桜は毎年冬に咲くんだ。珍しいもんだからあちこちから観光客がやってきてこの有様さ」
「へぇ!それは大変ですね」
「商売繁盛はありがたいけどね。お客さんもよかったら見に行っといでよ。大通りの先に大きな公園があるんだけど、千本桜なんて言われるほどたくさんの桜で見応えあるよ」
これはいいことを聞いた。
水琴は花見が好きだ。元の世界でもよく弁当を作り家族や友達と繰り出していたものだ。
あとで見に行けるかエースに聞いてみよう、と水琴は宿を後にしたのだった。