第71章 世界を照らす一筋の光
「マルコー。水琴ここにいるか?」
ノックと同時にドアが開けられ、覗いたのはつい今しがた話題に出していたエースだった。
目が合って水琴は不自然に固まってしまう。
「お、やっぱここにいたか。航路の確認したいんだけどいけるか?」
「あ、う、うん」
ひらりと海図を振るエースに何とか頷き、水琴は向かいに座るマルコを縋るように見た。
そんな水琴にマルコは自信ありげに頷く。
「水琴。大丈夫だよい。
__喰われるのが自信がねェなら、潔く喰ってこい」
「そういう問題じゃないから!!」
「飯の話か?」
話が見えないエースになんでもない!と告げ水琴はその背を押し退室する。
「ごめん。航路の話だよね」
「おう。そろそろ昼だし、食堂でそのまま話すか」
賑わう食堂で向かい合い座り海図を広げる。
「ベイの船がいるのがこの海域。で、おれたちがいる海域はここだ。
丸一日走れば着く距離だが水琴は初めてだし、夜は避けてこの島で一泊して向かおうと思うんだけどどうだ?」
航路を指でなぞりながらエースが確認する。
一泊という言葉に内心過剰に反応してしまうが、話の内容は至極妥当なものだ。
水琴だってまだ夜の海を行くのは自信が無い。
「うん。それでいいよ」
「日が落ちる前に島に着きたいから、昼食ったら出るぞ。荷物まとめとけよ」
「何持ってけばいい?」
「そんな特別なもんは必要ねェよ。あァでも防寒具は用意しといた方がいいな。春島といえどこの時期は寒ィし。あと自分用の海図は持っとけよ」
ある程度話がまとまったところで昼食に手をつける。
いつも通り嬉々として腹を満たしていくエースを見ていると、なんだか拍子抜けしてしまう。
……まぁ、今回は親父さんの遣いでもあるし。
そういうつもりは無いかもしれないし。
あまりに考え込みすぎて、遣い自体を失敗してしまったら元も子もない。
パスタを口に運びながら、水琴はとりあえずその件は頭の隅に追いやり、寝こけたエースの頭を小突いた。