第70章 一進一退……?
「綺麗だね」
受け取った景品の小瓶を光に透かし、水琴は目を細め中身を覗いた。
それはこの島の特産品である、夜の闇で光る珊瑚の欠片だった。
白砂に包まれるように収まるそれは今はただの珊瑚にしか見えないが、太陽の光を吸収する特性を持つため暗闇に持っていくとぼんやりと白く光るらしい。
結構人気の品で、最近ではアクセサリーへと加工されたものもよく出回っているのだとか。
景品として配り、興味を持たせて土産物を売る算段なんだろうなと思うが、水琴はアクセサリーよりもこちらの小瓶型のキーホルダーの方がお好みのようだ。
気に入ったなら買ってやろうかなと思ったが、元々アクセサリーはあんま付けないって言ってたしな。
あぁ、でも髪留めはいいかもしれない。
今日も付けているが、銀色は水琴の髪によく映える。
あとで覗いてみるかなとぼんやりと考え込んでいれば、横から腕をつつかれた。
「ねぇ。そろそろ親父さんのところ行く?」
気付けば日は傾き、夜の賑わいがエリア内を染め始めていた。
賭博エリアはアトラクションエリアのちょうど反対側のため、今から向かえばちょうどいいだろう。
「そうだな。向かうか」
帰路に立つ人の波を遡るように奥の方へ進む。
ぽつぽつと明かりが灯る様子は以前訪れた水晶の島を思い起こさせた。
「みんな朝まで遊ぶの?」
「初日組は結構な。明日の朝十時に交代だからそれまでに戻ればいいわけだし。ホテル取って遊び歩くやつもいるぞ」
「なかなかないもんね、こんな機会。あ、ホテルと言えば。エレナから聞いたんだけど!」