第70章 一進一退……?
「っ!」
頭上で水琴の息を呑む気配。
視線だけ上に向け、エースはにやりと笑った。
「ここ」
「……~~っ」
面白いくらい赤くなるのについ加虐心が疼く。
その衝動のままに指にかぶりついた。
「っエー」
「動くなよ、また零れるぞ」
揺れる手を掴み指先に口付ける。
もうアイスはついていないというのに、甘いように感じた。
「エース……っ」
咎めるような水琴の声にさすがに怒らせたか、と唇を離し様子を窺う。
そこには予想に反して、恥ずかしそうに目を伏せじっと耐える水琴がいた。
思いがけない反応に思考が停止する。
「__なーんてな」
ぱ、と手を放す。
ベンチに身体を預け、エースは自分のジェラートへと口をつけた。
「~~っもう、エース!」
「水琴が鈍臭いからだろ」
あっぶねぇ。
適当にいなしながら、エースは速まる動悸を悟らせないよう必死に取り繕う。
「外でなんてことすんの!」
本当にな。何考えてんだおれ。
からかうつもりがしてやられた感じがする。
尤も、向こうはそんなこと微塵も思ってないだろうが。
昂りかけた熱を宥めつつ、調子に乗るのは程々にしようと反省した。