第12章 音楽家誕生
白ひげ海賊団が立ち寄ったのは、小さな島ののどかな町。
休息と物資調達のため、モビーディックを目立たない場所へ停泊させクルーたちは久しぶりの陸へ降りる。
「いいかよい。絶対に面倒事は起こすなよい」
「なんでおれ見て言うんだよ」
「お前が一番危なっかしいからだよい!」
厳しい目つきのマルコに送り出され、水琴とエースは静かな町を歩いていた。
「どこ行く?」
「あ、エースさんソフトクリーム食べませんか?ここ農業が盛んみたいだし、絶対おいしいですよ!」
「お、いいな。どっかの牧場行くか!」
それほど大きくない町なのですぐ町の外れまで辿り着く。
海兵も海賊もいない、久しぶりに穏やかな時間が流れ水琴の心も安らいだ。
船で待つ者たちの土産も買い、水琴とエースは船へと元来た道を戻る。その途中水琴はふと半開きの扉に目をやった。
「水琴、どうした?」
「あ、エースさん」
先を歩いていたエースが水琴に気付き振り返る。
「ちょっとあの建物が気になって」
「建物?…あァ、あそこか」
水琴の見つめる先にエースも目をやる。
屋根のとがったレンガ造りの建物は、どこか懐かしい雰囲気を感じた。
「ちょっと寄ってみるか」
「え、でも勝手に入っちゃ…」
「駄目なら誰か止めるだろ。平気平気」
戸惑う水琴をよそにエースはさっさと半開きの扉を開け中へ入っていってしまった。
きょろきょろと辺りを見渡すが注意する者は誰もいない。
平気かな…と水琴もおずおずと扉を潜った。