第70章 一進一退……?
シュピール島は大きな三日月形の島だ。
三日月の両端が最も近づく場所から船が入り、三日月の内側に沿うように船を停める。
島の内部は様々なエリアに分かれていて、一般客が多いアトラクションエリア、買い物客で賑わうショッピングエリア、富裕層や海賊などが集う賭博エリアを中心に、各地でショーが行われ場を盛り上げている。
「エースはいつもどうやって過ごしてたの?」
「基本は隊長メンバーにくっついてカジノ行ってたけどな。あ、去年は闘技場にエントリーしたっけか」
「そんなのもあるんだ」
「結構なんでもありだからな」
船から降りたところにはまだ多くのクルーが集まっていた。
大部分は賭博エリアへ行こうとしているようだが、まだ日が高いからか先に買い物を済ませようとショッピングエリアへ向かう者もいる。
「あ、水琴じゃん。今から回るの?」
「なかなか別嬪に仕上げてるじゃあねェか」
「ありがと。そっちもスーツ姿かっこいいね!」
賭博エリアへ向かおうとする中にいつものメンツを見つけた。
どうやら今回のハルタのお目付け役はイゾウとサッチらしい。
「水琴ちゃんたちはどこ行くんだ?」
「アトラクションエリアが気になるなって思ってたんだけど……」
サッチにそう答え、水琴はちらりとこちらを見上げてくる。
「いつもカジノ行くんなら、一緒に行く?」
「別にアトラクションで構わねェよ。賭け事がしたい訳じゃねェし」
「そーそー。せっかくのデートなんだから二人で楽しんできなよ」
「気になるんならまた夜にでも顔出せよ。親父もその時にマルコと来るって言ってたしな」
「わ。親父さんも行くんだ。それじゃあその時にしよっかな」
そんなやり取りを横で見守っているとふとハルタとサッチの少し後ろに立つイゾウと目が合う。
切れ長の目が楽しそうに細められ、優美な笑みを浮かべた。
音にすることなく、口元だけが小さく動く。
”しっかりやれよ”
「………」
「どうしたの?エース」
「いや……別に」
逆にやりづらいと感じるのはおれだけか?