第70章 一進一退……?
「まずはどうする?」
「少し早いけどお昼にしよっか?あとだと混みそうだし」
「そうすっか」
アトラクションエリアは予想通り一般の観光客で賑わっていた。
水琴が人混みに流されないよう気を付けながら食事する場所を探す。
いくつかの候補から良さそうな場所を見つけ、中へ入った。早めの時間のため席はそう埋まっておらずすんなりと座ることが出来る。
「どうしよっかなー」
張り切ってメニューをめくる水琴を眺めていると視線に気付いたのか顔を上げる。
「なに?」
「いや、もう読み上げなくても大丈夫なんだなと」
「そんなの当たり前、」
そこまで言って水琴も気付いたらしい。あぁ、と頷くと懐かしそうに微笑んだ。
「一番最初の島で、エースに読んでもらったよね」
あの時はまったく分からなかったもんなぁ。と話す水琴にそうだよな、と同意する。
約一年半前。
井戸からこの世界に突如引っ張り出された水琴は本当に何も分かっていなかった。
言葉だけは通じたものの、文字も、この世界の常識も、海賊のことだって。
何一つ分からず真っ白な状態で、この世界を歩み始めた。
こちらから見れば危なっかしい行動に、冷や冷やしたことは一度や二度じゃない。
そんな水琴も、今や一番隊隊長補佐。
すっかりこの世界に馴染んでいる様子を見ると、感慨深いものを感じる。
「あの時みたいに途中で寝たりしないでよね」
「大丈夫だって。……たぶん」
「もう!あ、でもルフィの話はまた聞きたいかも」
「お、聞くか?そうだな、じゃああいつが十歳の時なんだけどよ。ルフィのやつ__」
あの時と同じ、ルフィの話に花を咲かせながら二人は料理を楽しむ。
話は尽きることがなく、結局食事が終わるまで続いた。
会計を終えてからこれでよかったのか?と一瞬エースは疑問に思うも、話の間心底楽しそうにしていた水琴の満足そうな表情にまぁいいかと思い直す。