第70章 一進一退……?
あーだこーだと一人考えているといつの間にか時間になっていたらしい。
軽いノックと共に水琴の自身の名を呼ぶ声がした。
「あ、悪い。今出る」
迎えに行くつもりだったというのに迎えにこさせてしまうとは。
それもこれもあのリーゼントのせいだ、とコーディネートしてもらった事は棚上げし、エースはこれ以上待たせる前にとドアを開ける。
「悪いな、待たせた__」
開けた視界で揺れる水色のワンピースにエースは言葉を失くす。
「ううん。私もちょうど今支度できたところで。待たせちゃってるんじゃないかと焦っちゃった」
ハイウエストの上品なワンピースの上に白のボレロカーディガンを纏った水琴はどうかな?と小首を傾げてエースの反応を窺う。
いつもは後ろで一纏めにされている黒髪も今日は下ろしハーフアップにされ、銀色の光沢の髪留めが髪を飾っていた。
化粧もしているらしく、眦を彩るオレンジがより水琴の表情を華やかに見せている。
サッチよ。さっきは悪かった。
服装、めちゃくちゃ大事だな!
「エース?」
「あ、悪ィ悪ィ」
内心拳を握っていると怪訝な顔で見上げられ慌てて取り繕う。
「似合ってるな、それ」
「ありがとう。エースもいつもと雰囲気違っていいね」
照れたようにはにかむ様子がまたいい。
改めてデートなんだなぁと噛み締めつつ、エースは水琴の手を取った。
「それじゃ、行くか」
「うん」