第70章 一進一退……?
満足のいく出来栄えとなったのか、サッチがエースの肩を叩きぐいと引き寄せる。
「せっかくの初日なんだからよ、うまくやってこいよ!」
「___は?」
「は?じゃねェよ!デートには持ってこいの島で、付き合い始めた初々しい男女と言ったら、そりゃもう決めるしかないだろ!」
「………あのなァ」
「あ、もしかしてもう経験済みか?」
「んな訳あるか!」
アイツ相手にそう簡単にいくか!
「つい最近まで顔見たら逃げ回ってたやつだぞ。せっかくのデートが大捜査線になったらどうしてくれんだ」
「最近は慣れてきてるじゃねェか。こういうのは勢いだって!ロマンチックなホテルでも取ってお泊まりデートしてこいよ」
頑張れよ若人!と背中を叩き去っていく。
ズレたハットを直し、エースは頬をかいた。
「勢いねェ……」
無理ゲーな予感しかしない。
エースとてこのままもだもだと足踏みをしていたい訳では無い。
しかし、ゆっくり慣れていこうと言った手前、あまりに距離を詰めすぎて余裕が無いように見えるのも嫌だ。
好いた女の前では懐の深い、余裕のある男でありたいと思うわけで。
いや。だけど。