第70章 一進一退……?
そんなすったもんだの前置きがあったものの、特に大きな問題もなく白ひげ海賊団は”眠らない島”シュピール島へ辿り着いた。
初日に回る予定である隊の面々は早速島での娯楽に想いを馳せ、降りるのを今か今かと待っている。
「やっぱカジノは外せないだろ」
「今回は闘技場にエントリーする奴いるのか?」
「おーい。お土産よろしくな」
エースもまた周りの空気に引きずられるように気持ちが上がってくるのが分かる。
そろそろ迎えに行こうかと水琴の部屋に向けようとした足は背後から襟元を引かれ空中で止まった。
「ッ何すんだよ!」
「お前、その恰好で降りる気か?」
「なんだよ、別に変じゃねーだろ」
振り向きサッチに文句を言えば呆れた口調で全身を見られる。
そんなに変だろうかとエースはざっと自身を見直した。
前開きの柄シャツにゆったりとしたカーキ色のチノパン。
靴や帽子はそのままだが、白ひげのマークは隠れているのでそこまで問題ある格好には見えない。
対するサッチはカジノにも足を向ける予定なのだろう。いつもの白い服ではなく黒系統のスーツでまとめ、自慢のリーゼントは崩され背中で無造作に一括りに纏められていた。
「お前なァ!せっかくのアミューズメント島でのデートでそれはないだろ。女の子はムードを大事にすんだから、もう少しめかし込めよ」
「んなこと言ったって、服のことなんてわかんねーよ」
「ちょっと来い」
無理やり引っ張られ、部屋に放り込まれる。
人のタンスを漁り服を吟味するサッチにエースは気が急いてくる。