第70章 一進一退……?
「お前、それでいいのかよ」
「え?うん。……だって、私が頼んだようなものだし」
うっすらと頬を染め恥ずかしそうに呟く水琴の様子にさすがにおかしいとエースも気付き始める。
「メンバー決めするときにね、マルコが”今回は水琴が一番大変だったんだから少しくらい我儘言えよい”って言ってくれて。
……だから、やっぱり普段回ることが多いメンバーが一緒の方が楽しいかなって、言ったんだけど」
視線をふらふらと彷徨わせながら濁しているものの、水琴もまたエースと回りたいと思いマルコに掛け合ってくれたことは想像に難くない。
目が合えば、照れ混じりの、しかし嬉しさを隠しきれない笑みでエースを見上げた。
「初日、一緒に回れるよ」
楽しみだね、と続ける水琴に、エースはハルタに一杯食わされたことを知った。
「……エース?」
「__あの野郎、あとで一発殴る……!」
「え、何があったの」
「さっきから人の部屋の前でうるせェよい」
ドアが開きとうとう部屋の主が顔を出す。
マルコは向けられる二つの視線を見返し、溜息を吐いた。
「いちゃつくなら余所でやれ」
「「違う!!」」
「いや、違わねェだろい」
なぜか声を揃えて否定する二人に再度マルコは溜息を吐いた。