第70章 一進一退……?
マルコの部屋までダッシュで駆け付ければちょうどドアが開き小柄な影が出てくるところだった。
勢いを殺しきれずドアに手をつき何とか衝突を免れたものの、予想以上に勢いづいたせいで水琴は身を竦ませる。
「っと、悪い。平気か?」
どこもぶつけてはいないと思うが、驚かせてしまったことを詫びる。
すぐ下の顔を窺うように覗き込めばぼっと頬に熱が集まった。
この前の一件から、突然の接近でも逃げ出すようなことは無くなったものの、反応はまだまだ顕著だ。
まぁ可愛いのでそこは大目に見ることにする。
てかずっとそのままでもいい。
「ち、近いから!」
「あァ、悪ィ悪ィ」
ぐいと胸を押されようやくエースは身を離す。
あまり悪びれた様子のないエースに水琴はもう!とまだ赤い頬を膨らませた。
ハルタじゃないが、そういうところを見るとついからかいたくなってしまって困る。
そこまで考えエースはここまで来た当初の目的を思い出す。
「そうだ、お前もう聞いたか?!」
「聞いたって何を?」
「島に降りるメンバーだよ」
「あぁ、うん。聞いたよ」
もう知ってるの?耳速いねぇとのんびりと返す水琴に、焦っているのが自分だけという事実を知りちょっと傷つく。