第70章 一進一退……?
がやがやと賑わうモビーディックの食堂。
だいたいどの時間帯も人がおり賑わってはいるが、今日は一段と浮き足立っている人の声が多いように感じられた。
まぁ気持ちは分かるけどな。とエースは今朝の朝礼で話されていた内容を思い出す。
「おはよ、エース」
「おー。おはよ」
朝食を乗せたトレイを隣に起き、水琴が席へ座る。
サラダにスープ、パンに卵料理といつもながらバランスよく取ってくんなと感心する。
おれか?飯っつったら米と肉だろ。
「今日なんか賑やかだけど、何かあったの?」
「告知が貼り出してあったから見たんだろ」
「それって次の島のこと?そんなに良い島なの?」
「あァ。あそこは__」
「良い島も良い島!なんたって娯楽島だからな!」
説明しようとしたエースの言葉に被せるようサッチが割り込んでくる。
水琴の向かいに腰を下ろしたサッチは、自身も沸き立つ心を抑えられないとばかりに楽しそうに続けた。
「別名”眠らない島”。島全体が娯楽施設になってて、昼夜問わず様々なイベントが催されてるアミューズメント島さ。毎年慰安で訪れてるんだが、水琴ちゃんは初めてだっけ?」
「そうなんだ!楽しそうだね」
「面白いよー。その分小競り合いも多いけどね」
「あ、ハルタおはよう」
おはよー、とエースとは反対側の水琴の隣に腰掛け、ハルタがくるくるとフォークを回す。
「一般客も多いけど、それ以上に海賊もたくさんいるから。水琴も巻き込まれないよう気を付けてね」
「気を付けるのはお前の方だろうが、ハルタ」
そんなハルタの向かいにはイゾウが座る。
もう食事自体は終えてるのか、湯気のたつ湯呑みだけを持ち啜る。
「去年イチャモンつけてきた海賊連中、煽りに煽って叩きのめしたのはどこのどいつだ」
「ハルタは率先して巻き込まれに行くというか、もはや台風の目になるからな。水琴ちゃん、あの島じゃあハルタの傍には寄らない方がいいよ」
「えー?騒動含めてがあの島の醍醐味なんじゃないの?」
「そりゃあお前だけだ」