第69章 ハリネズミのジレンマ
ある日の早朝。
朝礼に向かうマルコの横には水琴が並ぶ。
「ほんと、お騒がせしました……」
「他の奴らにもあまり騒ぎ立てるなとは言ってあるから、お前もあんま気にすんなよい」
リハビリが効いたのか、あれから水琴の過剰反応も鳴りを潜め普通にやり取りすることは可能となっていた。
一時期はどうなるかと思ったが、問題なく纏まって良かったとマルコも人知れず胸を撫で下ろす。
あのままエースが思い詰めていれば、本気で二番隊隊長による一番隊隊長補佐誘拐事件が起こっても不思議ではなかった。
誘拐の危機に直面していたとは微塵も思っていない部下は今日の朝礼での議題を確認している。
「それで、次の島についてだけど__」
曲がり角に差し掛かった時向こうから出てきた人影とぶつかる。
「お。悪ィ……って水琴か」
「エースお前なんでそっちから来た?」
「当番明けだからシャワー浴びてきたんだよ。朝礼には間に合ったろ?」
「ギリギリだけどな」
「今から行くんだろ?一緒に__」
話し込む二人の間で風が吹き上げる。
収まった頃には一人姿が消えていた。
「こ、の……」
ふるふると震えるエースにマルコは溜め息を吐く。
「いい加減にしろ、お前はぁぁああああ!!!!」
「ご、ごめんなさぁぁあああい!!!」
完全に慣れるのにはまだまだ時間がかかりそうである。