第69章 ハリネズミのジレンマ
「ま、まだ時間はあるし。とりあえず寝るか」
「え?」
水琴を抱きしめたままエースがベッドへと倒れ込む。
抱き枕よろしく両腕に包み込まれ、水琴は慌てた。
「え、寝るって……」
「昼寝途中で起こされて眠いし」
「……寝るだけ?」
「それ以上をご希望なら期待に応えるのもやぶさかじゃねェけど」
ぶんぶんと勢い良く首を振る水琴に対してそれはそれで傷つく、とエースはぼやく。
「心配しなくても、何もしねェよ」
今は、と音にすることなく水琴の頭上で呟かれた言葉には気付かず、水琴はそろそろとエースの様子を窺う。
「……ほんと?」
「嘘言ってどうする。言ったろ。少しずつ慣れてこうぜって」
ぽんぽんと背中を叩かれ、水琴もようやくベッドへ身体を預ける。
気が抜ければエースの温もりに睡魔が訪れるのはあっという間で。
「__お休み」
お互いの温もりを感じながら、二人はそっと幸せな微睡みに身を任せた。