第11章 現実
「おォっと、熱烈だねェ」
「サッチさん!よかった、無事で…」
「ふふん、このサッチ様があれしきのことでくたばるわけないじゃねーの。心配してくれちゃって可愛いなァ」
ぐりぐりぐりと頭を容赦なく撫でられる。いつもの様子にほっとする。
「そういえば、二人はどうしてここに?」
ぼさぼさになった髪を必死に直しながら二人を見上げる。
「宴だよい」
「功労者の水琴ちゃんも呼ばないとってね」
ほらこっちこっちと案内され辿り着いた甲板では、既に宴が始まっていた。怪我をしたクルーたちも交じって騒いでいるけどいいんだろうか。
「水琴、身体は平気か」
「ドクさん。すいません、急に飛び出しちゃって…」
「あれはしょうがなかろう。だが、あまり無理はするんじゃないぞ。お前は戦闘員ではないのだから」
静かに酒を傾けていたドクを見つけ声を掛ける。
向けられた言葉と眼差しに白ひげと似たものを感じ、クルーに白ひげとは別の信頼を向けられている理由がよく分かる。
「水琴!」
笑い騒ぐクルーの様子を眺めていると肩を叩かれた。振り返ればエースが満面の笑みでジョッキを掲げている。
挨拶代りに乾杯し、並んで手摺に寄り掛かった。
「水琴も大活躍だったんだってな、話聞いたぜ」
「ただナースさんの手伝いとかしてただけですよ。甲板に出てサッチさんに迷惑かけちゃったし…」
「でも、それがなかったらモビーもどうなってたか分からねェしな。お手柄だって」
「エースさんこそ、船長倒したって聞きましたよ。今夜の主役がこんなとこいていいんですか?」
「主役も何もねーよ。宴は楽しむためにあるんだからな」
にしし、と笑う様子は弟にそっくりだ。