第68章 降り積もる” ”
「あ!エースあれ見て!」
戻ってきた新世界。
遠くの方に見えた懐かしい船を指さし、水琴はエースを振り返る。
「いたいた。時間通りだな」
「おーい!みんなぁー!」
甲板から大きく手を振る。モビーディックが近付くにつれ、その甲板の様子も見えるようになってきた。
同じように大きく手を振り迎えてくれる家族に水琴は涙ぐむ。
「みんな、ただいま!」
甲板に上がり、水琴は心配かけてごめんなさい!と頭を下げる。
「お前が謝ることじゃねェよい。悪いのはサッチだ」
「いや!確かに俺だけど!ごめんなァ水琴ちゃん。大丈夫だったか?」
「うん、平気だったよ」
「アラバスタでは大変だったようだな。無事で何よりだ」
「ジョズ……うん、ありがとう」
早く親父に顔出してこいよ、と小突かれ水琴はうん!と船長室まで続く扉へと駆けていく。
しかしすぐに戻ってくると、船を括りつけ上がってきたエースへと駆け寄った。
「エース、本当にありがとう!」
紅潮した頬を上げ、きらきらとした瞳をエースへ向け水琴は満面の笑みを浮かべる。
その笑顔にエースはおう、と返した。
パタパタと駆けていく背中をエースは見送り溜め息を吐く。
「__だから、あれは反則だろ……」
ほんと、無意識なのがたちが悪い。とエースは空を仰いだ。
まぁ。ようやく自覚も芽生えたことだし。
これからはじっくりと詰めていこう。
もう、放すつもりは無いのだから。
「あ、ウィリー。あの船なんだけどよ、どっか格納するとこ__」
整備士を見つけ駆け寄っていく。
手摺の上で、小さな小石がキラリと光った。