第68章 降り積もる” ”
「__で。お前は?」
自己嫌悪に陥る水琴にエースが返事を促す。
ようやく自覚したばかりの気持ちを晒せと言われ、水琴は気恥ずかしさで頬に熱が集まるのを感じる。
しかし、エースがここまで歩み寄ってくれたのだ。
勇気を出し、水琴もまた想いを言葉へ乗せようと口を開く。
「__好きだよ。エースが、好き」
「知ってる」
「い、言わせといてそれ?!」
「いやお前、むしろよくあれだけ無意識に振る舞えてたなと……」
呆れたようにこちらを見下ろすエースの視線に自覚無しに色々やらかしてしまっていたことを悟る。
だがこっちはこっちで家族愛だとばかり思っていたのだ。少しは勘弁してもらいたいと、水琴は余計な一言を口にする。
「しょうがないじゃん、今までとは全然勝手が違ったんだから」
「__”今まで”?」
急激に冷える声と雰囲気に墓穴を掘ってしまったと気付くが一度出た言葉は戻らない。
「あ、いや、エースが思ってるようなのじゃなくてね?ほら、誰しも甘酸っぱい片思いの思い出とかあるじゃない?」
「ほー。つまり、どんなだ?」
「ど、どんなって。体育の授業中に活躍するのをこっそり盗み見てときめいちゃうとか、修学旅行で同じ班になって普段見ない私服姿にドキドキするとか」
「修学旅行ってなんだ」
「そこ今聞くとこ?!」
ドキドキね、とエースが独りごちる。
頬に無骨な手が触れた。涙の跡をそっとなぞる。