第68章 降り積もる” ”
恋なら知っている。
その人のことを考えるだけで胸がどきどきと高まり、ちょっとした触れ合いにも緊張し。
違う子と仲良くしていれば切なくなり嫉妬も覚える、綺麗なだけではいられない心の起伏。
けど、愛は。
愛とは、家族に向ける愛とどう違う?
『__水琴』
遥か海の彼方から、ベイが心を悩ませる妹分へそっと語り掛ける。
『あんたは、難しく考えすぎる。もっと、心に素直になればいいんだよ』
「素直に……」
『水琴は、エースにとってどんな存在でありたい?』
ベイの問い掛けに、水琴はこの世界での軌跡を思い起こす。
__いつだって、傍で支えてくれた。
いつだって、水琴以上に自分のことを信頼してくれ。
竦む足を励ますように、手を引いてくれ。
まっすぐ前を向いていられるように、誇りを背負う背でいつだって前を走ってくれた。
彼がいなければ、今の水琴はいない。
だからこそ。
彼にとっても、同じ存在でありたかった。
「それで__」
呟きかけ、はたと水琴は我に返る。
それで?
それ以上に、何かあると?
ちゃぽん、と音がする。
かちり、と小石がぶつかり合う音が聞こえた。