第68章 降り積もる” ”
あてもなく夜の町を歩く。
日が落ちて間も無いからか、いまだ通りは人で溢れていた。
買い物をしたり飲みに歩いたりする人々の間を縫うように、水琴はふらふらと歩いていく。
__これからどうしよう。
衝動的に飛び出して来てしまったが、行くあてなどあるわけもない。
だが、あそこには帰りたくないという強い思いに突き動かされ、水琴はあまり考えずに脇道に入り気の向くままに角を曲がる。
少し行くと小さな広場に出た。その先は公園だろうか。広場と区切るようにある腰ほどの高さの塀の向こうには緑が見える。
突然現れた緑に誘われるように、水琴は塀を越えようと近付く。
ぷるるるる、ぷるるるる。
突然水琴しかいない空間に電子音が響いた。
背後から聞こえる音に驚いて振り返るが誰もいない。
すぐに水琴は自身のバッグの中から聞こえることに気が付いた。
そういえば預かったままだった、と水琴は急いで電伝虫を取り出す。
これに掛けてくる相手は限られている。白ひげか、マルコかと水琴は予想しながら受話器を取った。