第68章 降り積もる” ”
「__あのね、エース」
緩慢に足を組み直し見事な脚線美を見せつけ、妖艶な笑みを浮かべたアリシアは赤い口元へそっとグラスを寄せ音を鳴らす。
その雰囲気は先程までの様子とはかけ離れており、見る者が見れば一目で虜となってしまう、そんな妖しい魅力を纏っていた。
「密室で、妙齢の男女が二人きりで、仲良く”お喋り”。
__それだけで終わるって思う人が、はたして何人いるのかしら」
アリシアの言葉を聞き、理解して一拍。
エースはもの凄い音を立てて席を立った。
慌ただしく荷物を持って出て行こうとするエースに対し、アリシアはふふふと笑う。
「その様子じゃそういうことな訳ね?」
「違ェよ!そうじゃねェけど……あァもう!」
鍵寄越せ!と怒鳴れば軽い音を立てて鍵が飛んでくる。
それを片手で受け取ると、エースはドアにぶつかるようにして押し開けた。
バタバタと騒がしい足音が遠ざかっていくのをアリシアは楽しそうに見送る。
「……ほんと、楽しいったらないわぁ」
次回会う時の肴は決まった、とアリシアはグラスを傾けた。