第68章 降り積もる” ”
「はー、やっぱり直に聞くと違うわね。胸が高鳴るわぁ」
「……そりゃ何よりだな」
向かいの椅子に腰をかけ、甘い溜息をつくアリシアをエースはややぐったりとしながら見る。
「そんなに好きなら会いに行きゃいいだろが。アイツだって別に迷惑とは言わねェだろ」
「分かってないわね!こうやってひっそりと影から見守るのがいいんじゃないの」
「……好きなら普通傍にいたいもんじゃねェの」
「好きだけど、そういう好きとは違うのよ。なんたって”推し”なんですからね!」
「意味わかんねェ」
推し活最高!と叫ぶアリシアにエースの疲れは一気に増える。
「あぁ愛しの君……スペード海賊団が白ひげに負けたって聞いた時はエースに殺意さえ覚えたけれど、こうやってまたお話が聞ける日が来るなんて……」
顔を出しに来てよかった。放っといたらいつか背中を刺されていたかもしれない。
頬を染め身体を捩るアリシアをエースは冷めた目で見つめた。
「そう、好きと言えば」
突然我に返ったアリシアが貴方大丈夫?とエースへ向けてグラスを揺らす。
「何が」
「あの子よ、水琴。勘違いしてるんじゃなくて?」
「勘違い?」
一体なんのことだと訝しむエースにこれだから男は、とアリシアは半眼で睨み付ける。