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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第67章 向き合う心






 次の日同時刻。
 水琴を出迎えたのは無人の診察室だった。

 いつもなら中で待っているのに、一体どこにいるのだろう。

 待っていればいいのだろうかと立ち尽くしていれば、背後から可愛らしい声が掛かる。

 「キャプテンなら自室だよ」
 「え?そうなの?」
 「今朝方まで実験してて、さっき診察から帰ってきたとこだから。よければ起こしてあげて」
 「いや、それは……」

 仮にも異なる旗の海賊が、船長室に入っていいものか。
 そしてそれを勧めるベポもいかなるものか。

 いや、三日連続で余所の船に上がり込んでる時点で今更とは思うけど、やっぱりなぁ。

 どう答えていいものか悩む水琴に「いーからいーから」とベポが促し、診察室から追い出される。

 「キャプテンの部屋あっちの奥だから」

 よろしくねーと手を振られれば、行くしかない。

 言われた部屋のドアを軽くノックする。

 「ロー?」

 声も掛けるが返事も物音もしない。
 一応了解は得た、と水琴は静かにドアノブを回す。


 「うわ……」

 現れた壁一面の本に水琴は絶句した。
 揺れで落ちないようストッパーのついた特殊な本棚にはこれでもかと本が詰め込まれている。
 ざっと背表紙を見たところ、ほとんどが医学書、そして様々な専門分野の本だと見受けられた。
 
 これ全部頭に入れているのだろうか。

 小説は読むものの、それ以外の活字には疎い水琴は素直にその読書量に尊敬の念を覚えた。
 しかしてその持ち主はベッドに沈み込むように倒れている。

 うつ伏せで苦しくないのかな、と思いながら近寄り様子を伺う。
 かなり疲れているのかピクリとも動かない。
 診察後にシャワーを浴びたのか、髪はやや湿っていた。
 昨日よりも濃くなっているクマを見てベポの言葉を思い出す。


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