第67章 向き合う心
「安全に服用する条件として、閾値と限界値の幅がどれくらいなのか見定める必要がある。昨日からの実験から推測するに、閾値はだいぶ高いようだから限界値が分からなくてもなんとかなるだろ」
「……ごめん、もう一回言って」
「少量でも効果があるからわざわざ多量に服用して危険を犯す必要は無いってことだ」
あまり聞き覚えのない単語がぐるぐると脳内を回りパンク寸前の水琴に対してローが呆れながら言い換える。
「今日は閾値をもう少し具体的に割り出したい。実験用にまた血を貰うぞ」
昨日と同じように献血を行う。
二日連続なのでちょっと心配だったが、水分は多めに取っているし肉も食べてきたので大丈夫だろう。
休息後、お役御免となった水琴は船を降りようと甲板へ出た。
実験に関してはローに任せるしかない。睡眠不足気味なのが心配だが、その辺りはクルー達がフォローしてくれるだろう。
「あー!水琴今日は終わり?」
「うん。ベポは休憩中?」
甲板へ出ると昨日帰りに遭遇したハート海賊団の癒し、ベポに出会った。
何度見ても可愛い。ツナギ着てるとかほんと可愛い。
癒しを求めるようにふわふわの身体に抱き着く。暖かい、お日様の香りがした。
「くすぐったいよう」
「ごめん、でも気持ち良くてつい……」
「分かる分かる。疲れてる時とかめっちゃ抱きつきたくなるもんなー」
「あ、シャチ」
よ、と片手を上げ現れたシャチは作業中だったのだろうか。
ツナギは上半分脱ぎ腰周りで結ばれており、手にはペンチを持っていた。