第67章 向き合う心
なるほど。一つ勉強になった。
「ちなみにこの血は血液が流れている生物にしか効果がない。植物には効かねぇってことだな。生物の血中に含まれるある成分と結びつくことで初めて治癒効果をもたらすらしい。だからお前の血だけがあってもそれ単体では万能薬にはならないってことだ」
それは初耳だ。
つまり、誰かが服用する前の血は本当にただの血でしかないらしい。
「血液と混じらねぇと効果は発揮されねぇから、ただ皮膚の表面に付くだけじゃ意味がねぇ。外傷なら直接患部に擦り付けることで表面の怪我は治る。それ以上は体内に取り込まないと駄目だ」
「血と混ざらないと駄目なら、口から飲んで効果が出るのはなんで?」
「吸収すりゃ血と混ざる。少し時間差はあるが、まぁ誤差の範囲だろ。即死ダメージでもなけりゃあ効果は出る」
まだ一日とは思えないほどの成果である。改めて彼の優秀さを感じる。
「__ところで、これ全部実験済みってこと……?」
「実験しなきゃ分からねぇだろ」
「ちなみに、何を使って実験を?」
「さて、次の実験結果だが」
さらりと流す。え、魚とかだよね?まさかそれまで自分でやってないよね…?
「亡者になる条件だが」
一番知りたかった話に水琴の気も引き締まる。
「こればっかりは闇雲に実験はできねぇ。お前の話じゃ異世界へ渡るときの光でしか浄化できないって話だったからな。だがまぁ、仮説は立てられる」
おそらくは限界値に達したことによる浸食だ、とローは仮説を話す。
「侵食……?」
「お前の血が服用者の体内に一定量混じると、治癒を越えて体内を侵食する。暴走し始めるってことだ」
植物に水を与え過ぎれば根が腐るように、行き過ぎた治癒は肉体を蝕む。
やがてそれは脳にも達し、”亡者”へと変貌する。